海野の章

 叫んだ時には、もう遅かった。
「――ッ斎藤さん!」
 大きな爆発音とともに、目の前に広がる白い閃光。その光の中に、海野達の仲間である左近児と、薫を庇った斎藤。彼ら二人が飲み込まれていくのを、聖の目はしっかりと見ていた。
「斎藤っ!」
 いきなりの強い光のせいで、目が少しおかしくなっている。しかしそんなことを気にしている間もなく、聖達は慌てて倒れた斎藤の元へ駆け寄った。
「二人とも、ひどいケガだわ!」
 見れば、爆発のせいで体中を火傷しており、出血も酷い。元々傷だらけだった左近児の体は、余計に痛々しかった。
 ――ドクン……。
 それを見た時、心臓が、血液が、大きく脈打ったのがわかった。
「しがみつかれて逃げ切れなかったのか……。それにしても、仲間まで巻き添えにするたあ、根っから腐ったヤツらだな」
「仲間? 誰が?」
 ――ドクン……。
 それは除々に、確実に大きくなる。
「左近児を我々と一緒にするな。ヤツは何かの役に立てばと思って、拾ってやったまで」
「だから……?」
 俯いたままの聖が、ポツリと呟いた。
 ――ドクン……。
 うるさいくらいの鼓動。熱いくらいの血。
「だから、どうなっても良かったんですか」
 その声が震えていることに、気付いたのは近くにいた左之助達だけ。聖の問いかけを聞いて、結城は悪びれもせず鼻で笑いながら続きを言い放つ。
「ああ。そんな子供、生きようが死のうが、一向に構わんのさ」
 ――ドクン……ッ
 手に残る感覚。呼び覚まされる記憶。
「ふ……るな……」
「聖……?」
 今まで感じたことのない、怒り。
「――ッふざけるなぁ!!」
 頭の中で、何かが割れる音がした。

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